澱粉科学
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イソマルトースおよびマルトースとRhizopus niveusグルコアミラーゼの結合反応の螢光光度法による研究
大西 正健和田 栄彦山田 隆司田中 晶善廣海 啓太郎
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1983 年 30 巻 1 号 p. 57-61

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抄録
 グルコアミラーゼとイソマルトースの結合を,酵素タンパク質の螢光を指標として静的に観測し,その結果をマルトースの場合と比較することにより,これらの基質の結合様式の違いを明らかにするとともにイソマルトースがマルトースに比べてきわめて遅く水解される理由を考究しようとした. 螢光滴定法により,両基質ともこの酵素と複合体を形成することが知られた.また,本酵素の遷移状態アナログと考えられるグルコノラクトソ(L)の共存系における螢光滴定の結果から,イソマルトース(I)はグルコノラクトソとは全く独立に酵素(E)と非拮抗型で結合して,ELI三重複合体を形成するのに対し,マルトースはグルコノラクトソと拮抗的に結合し,三重複合体はほとんど形成しない. グルコノラクトソが本酵素のサブサイト1(非還元末端側サブサイト)に結合すること,および基質は生成物を生じるプロダクティブな結合様式で,このサブサイトを占有することを考慮すると,イソマルトースは,主として生成物を生'じないノンプロダクティブな結合様式で本酵素に結合するものと考えられる.このことがマルトースに比べ,きわめて遅い水解反応を受ける要因となるものと推定される.一方,マルトースはほとんどプロダクティブな結合様式をとるものと考えられる.
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© 日本応用糖質科学会
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