抄録
過疎高齢化により、農村集落の多くが共同作業や行事の縮小化を経験しており、その様子は集落の限界化とされている。限界化に関する先行研究は、土地の管理 、買物 、通院等について定量データを用いたものが多い。一方で、住民の経験や考えなどの定性データを用いることで、限界化についてのより詳細な分析が可能となる。本稿は秋田県上小阿仁村を対象とし、規模の異なる4集落の自治会長に対して、行事、共同作業、集落の将来について聞き取り調査を行った。行事については、住民に負担の少ない形に変更され維持されていた。共同作業については、集落規模の違いに関わらず、ほぼ同じ内容が維持されていた。除雪など各世帯での作業では、住民間での支援が認められたが、支援を受ける側の自主性を失わせないための配慮がされていた。将来については、小規模集落であるほど数年のうちに取り組める活動に集中している様子が明らかとなった。地域づくりでは、外部との交流が地域資源を再評価するために重要であるとされるが、同様の交流を同地域の他集落との関係性に期待できることが示された。このような交流を支援することが、今後の地域のあり方について検討する際に重要となる。