国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要
Online ISSN : 2433-5657
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3 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 豊田 哲也
    2016 年 3 巻 p. 1-11
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/27
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    ブータンでは国土の51%が保護地域(国立公園あるいは野生動物保護区等)に指定されている。アジア諸国の中だけでなく、世界的に見ても極めて高いカバー率である。2008年制定のブータン憲法には森林率への言及もある。ブータンの積極的な自然保全政策の背景には、国際観光産業の振興を求めるブータンの独自の事情がある。しかし、ブータンの保護地域内には多数の村落があり、国家の観光戦略の実現のために地域住民との利益の調整が不可欠である。そのために、ブータン政府は、生活インフラの近代化によって地域住民から環境保護への協力を引き出すとともに、民泊の提供等の形で地域住民の参加させるエコツーリズムを推進している。ブータンの自然保護政策は、保護地域内に多くの住民を抱える他のアジア諸国にとっても参考となるであろう。
  • 名越 健郎
    2016 年 3 巻 p. 13-21
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/27
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    筆者はアジア地域研究連携機構研究紀要の第1号に「秋田犬の国際化戦略」と題して秋田犬が世界的に人気を集めていることを紹介したが、その後秋田犬は「高貴な犬」として各国で人気がさらに高まっている。海外の人気が国内にブーメラン効果で還流する動きもあり、秋田県大館市は福原市長の下、秋田犬利用プロジェクト「ハチ公の駅」を設置し、観光の目玉にする構想を進めている。国際教養大でも4月、秋田犬ブランドの活用法をめぐり読売新聞主催のシンポジウムが行われた。秋田犬は秋田が独占可能な唯一のブランドでもあり、官民一体で秋田犬人気の相乗効果を狙うべきだ。
  • 工藤 尚悟
    2016 年 3 巻 p. 23-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/27
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    過疎高齢化により、農村集落の多くが共同作業や行事の縮小化を経験しており、その様子は集落の限界化とされている。限界化に関する先行研究は、土地の管理 、買物 、通院等について定量データを用いたものが多い。一方で、住民の経験や考えなどの定性データを用いることで、限界化についてのより詳細な分析が可能となる。本稿は秋田県上小阿仁村を対象とし、規模の異なる4集落の自治会長に対して、行事、共同作業、集落の将来について聞き取り調査を行った。行事については、住民に負担の少ない形に変更され維持されていた。共同作業については、集落規模の違いに関わらず、ほぼ同じ内容が維持されていた。除雪など各世帯での作業では、住民間での支援が認められたが、支援を受ける側の自主性を失わせないための配慮がされていた。将来については、小規模集落であるほど数年のうちに取り組める活動に集中している様子が明らかとなった。地域づくりでは、外部との交流が地域資源を再評価するために重要であるとされるが、同様の交流を同地域の他集落との関係性に期待できることが示された。このような交流を支援することが、今後の地域のあり方について検討する際に重要となる。
  • 秋葉 丈志, 橋本 洋輔, 嶋 ちはる
    2016 年 3 巻 p. 35-49
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/27
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    アジア地域研究連携機構では、機構内外の教員が連携して、秋田県内の医療・介護施設が外国人看護・介護人材を受け入れることが可能か、またその条件や課題について、調査研究を行うプロジェクトを展開している。2015年度は、昨年度に続き有識者を招いた研究会を行うとともに、秋田県内の介護施設に対し、外国人材受け入れへの認識や課題を問う質問紙調査を実施し、そのうちいくつかの施設を訪ねて聞き取り調査を行った。また、大学と行政が連携して各施設の受け入れをサポートする県外の先進事例の訪問調査も行った。これらの調査に基づき、プロジェクトとして、今後秋田県が外国人介護人材受入れを進める場合に必要な対応に関する「提言」及び調査資料を掲載した報告書をまとめた。本稿はこのうち「提言」の本文を掲載するものである。
  • 「横手のかまくら」を事例に
    中川 秀幸, 後藤 尚紀
    2016 年 3 巻 p. 51-61
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/27
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    本稿では、地方文化財を活かした観光づくりのケーススタディとして秋田県横手市の市指定無形民俗文化財である「横手のかまくら」のアンケート調査を実施した。「横手の雪まつり」当日に訪れた回答者のプロフィールから、横手市外からも多くの観光客が訪れている一方で、「横手のかまくら」の重要な要素の一つ、水神様を祀るという認識が市外の在住者にあまり知られていないことを明らかにした。また、歴史的文化的価値などの利用価値が高く認識される一方で、オプション価値を含む非利用価値が低い傾向にあることを示し、その原因について考察した。
  • 根岸 洋
    2016 年 3 巻 p. 63-72
    発行日: 2016年
    公開日: 2018/09/27
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    アジア地域研究連携機構とJR東日本との連携事業として、国際教養大学では2015年度秋学期に同社寄附講座として「文化遺産論」を開講した。本講座は基盤教育課程の一科目として開講したものであるが、筆者の担当する文化遺産観光研究プロジェクトの一事業としても位置づけて実施した。本講座においては通常の講義に加え、同社からの寄付金を活用したフィールドワーク、ゲスト講師による講義を複数回行うことで、実践的視点を重視する課題解決型学習(PBL)の形式を採用した。その結果、地域に残された自然や文化等の遺産を地域住民が主体となってその価値を保全しつつ、保全にかかる経済的負担と観光資源化から得られる利益のバランスをとる、持続可能な遺産観光(sustainable heritage tourism)の分野に絞ったほうが、本学の教育理念や地域活性化に貢献する観光振興を目指すJR東日本のミッションにより合致し、また秋田県を含む東北地方が抱える課題の解決に大きく寄与する可能性が高いと考えるに至った。
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