2019 年 67 巻 3 号 p. 1195-1202
テンギュルの「秘密部」に収録されているDīpaṃkaraśrījñānaの儀軌文献のうち,これまでに論じてこなかった五つの文献,Sarvakarmāvaraṇaviśodhananāmamaṇḍalavidhi, Homavidhi, *Pañcacaityanirvapaṇavidhi, *Vimaloṣṇīṣadhāraṇīvidhi, Citāvidhiについて考察する.このうち,Vimaloṣṇīṣadhāraṇīは,小塔と小像に収められる陀羅尼としても知られていることから,*Vimaloṣṇīṣadhāraṇīvidhiは*PañcacaityanirvapaṇavidhiとCitāvidhiに関連する儀軌である.また,小塔と小像はマンダラに配置されるものであり,後者の二つはSarvakarmāvaraṇaviśodhananāmamaṇḍalavidhiに関連する文献である.これらの文献は,小塔・小像やマンダラの制作方法を解説するものではなく,それらの制作過程において行われる儀軌を紹介したものである.Homavidhiは,他の儀軌文献とは異なり,護摩儀礼の手順を紹介したものである.これらの儀軌は,彼がチベットに伝えたものであるが,それは同時代のインドにおいて実施されていたものでもある.
また,Citāvidhiの奥書の記述から,北京版の目録でMantrārthāvatāra (P. no. 4856)からCitāvidhiまでの13文献が「Dīpaṃkaraśrījñānaの13のマントラの伝承」として伝えられていたことが確認できた.また,その奥書には,テンギュルにおける“Atiśa”の呼称も確認できた.