印度學佛教學研究
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中部ジャワ,チャンディ・プラオサン,祠堂外の仏像群について
伊藤 奈保子
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キーワード: Candi Plaosan, Central Java, Indonesia
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2019 年 67 巻 3 号 p. 1203-1209

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抄録

チャンディ・プラオサン(Candi Plaosan)は,インドネシア,中部ジャワのソロゲドッグ平野の仏教とヒンドゥー教の遺跡群の北東に位置する.北プラオサン(Lor)と,南プラオサン(Kidur)の2つからなり,現在,北プラオサンには2棟(南堂6軀残存,北堂6軀残存)と北接する北テラスに21軀(如来像9軀,菩薩像11軀,クベラ1軀),プラオサン周辺から収集した尊像群を収めた収蔵庫31軀(如来,菩薩,女神,ガネーシャ等),収蔵庫の周辺に12軀(如来,菩薩(内,観音1躯),女神),他地域の博物館に所蔵されている像9軀(文殊,弥勒,如来,僧形,クベラ,阿弥陀など),南堂・北堂の各正面に,対の守門像が計4軀の計89軀が確認できる.本論では,特に北テラスの菩薩についてその報告と考察を行うこととした.

北テラスの尊像の比定のためには,北プラオサンの各堂に残存する12軀の考察が重要となる.1つの堂に3室あり,各室には台座が3つ設けられ,中央の像は亡失するが,両脇の菩薩像は残存する.12軀の菩薩像はすべて石造で,踏み下げ坐の姿勢をとり,持物とその配置順も南堂・北堂でほぼ共通している.筆者は南室・中央室・北室から順に,文殊,地蔵,金剛手か,観音,普賢,弥勒と考察し,八大菩薩のうちの二尊(除蓋障,虚空蔵)を除いたものであるとした.この結果をもとに北テラスの菩薩像を考察すると,文殊,地蔵,金剛手か,観音(2軀),弥勒が確認でき,チャンディ・プラオサンには,南堂・北堂の尊像と同様の形式の尊像群が少なくとも1つは存在していた可能性が高いことが導き出された.八大菩薩に関連する像は,中部ジャワのチャンディ・ムンドゥット(Candi Mendut)にもみられ,こうした形式がインドからインドネシアへ9世紀頃までには流伝しており,その造形は西インドのエローラ石窟及び,東インドのウダヤギリなどからの影響と考えられる.

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© 2019 日本印度学仏教学会
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