1934 年 54 巻 549 号 p. 268-272
異状分散を爲す絶縁材料の損失特性曲線は種々の立場から説明せられて居るが,筆者は周波數或は温度を變へた場合の誘電率の最大値と最小値の比と力率最大値との間には,何れの解説に從ふも常に同一の關係が成立する事を認め,而も此の關係と實測値とは數量的に相當の喰違ひのある事を示して居る。次に異状分散を爲す絶縁材料の一例として酸を觸媒としたベークライトと蓖麻子油の混和物を採り,これを以つて含浸紙を作つて其の破壞電壓を測定した結果を,V型力率曲線を抛物線状と見做して導いた熱破壞電壓の式と比較吟味して,含浸紙が薄い場合の破壞機構の主因は熱では無い事を指摘して居る。