電氣學會雜誌
Online ISSN : 2187-6797
Print ISSN : 0020-2878
ISSN-L : 0020-2878
複合ダイナトロン發振器の詳論
林 龍雄
著者情報
ジャーナル フリー

1934 年 54 巻 557 号 p. 1258-1264

詳細
抄録

前論文に於て發表した複合ダイナトロン發振器の諸相を前論文よりも尚深く研究した結果を示してある。先づ複合ダイナトロンの發振機構の核心をなす二次電子放射に依る負性抵抗が一極發振時に於ても他極に於て得られる事を實驗的に實證し,又その値を理論的にも求めた。又一極發振時に於ける他極の負性抵抗が非發振時よりも低くなり得る事を明かに示した。
次に共振附近に於ける現象を波形を示して明かにし,又前論文で可能性を論じながら實驗的に證明出來なかつた事を實驗的に明かにした。殊に唸り周波數は非常に低い所まで發生する事が出來その形状も純正弦波である事をオッシログラムに依つて示して居る。
一方の周波數と他方の周波數とが非常に異つて居る場合には變調電波の發生,二重通信等が出來る事を述べ,前實驗では不可能であつたωr<ωaの状態も實現し得た。
アノード振動を無線周波にし,その振動が可聽周波の内部グリッド振動に依つて如何に變調せられて居るかと言ふ事を無線周波で受波して整流し,オッシログラムに依つて研究した。その結果歪なき100%に近い變調が行はれて居る事が解つた。
アノード•インダクタンスと内部グリッド•インダクタンスとの間にMarなる相互インダクタンスのある時ωr>ωaならばアノード振動の内部グリッド振動への同期化作用はMarの増加と共に増し,遂に内部グリッド振動の周波數はアノード振動の周波數に依つて支配せられるに至る。この間の過渡現象を波形ゐ觀測と共に述べて居る。併しωr<ωaの場合にはこれに反し,内部グリッド振動がアノード振動を同期化する時もあつて,一般的には低い周波數が高い周波數を同期化しやすいと言ふ結論になる。
前論文に示した樣に内部グリッド垂下持性に於ては纎條電流の小なる時の方が負性抵抗が小である。それに反してアノードの負性抵抗は纎條電流が大なる方が小であるからその關係は全く逆である。發振の状態に於て實驗した所に依つてもアノード振動は纎條電流Ifが規定以下になると急激に減少するに反して内部グリッド振動は規定以下になると段々増加し,アノード振動が停止する附近に於て最大を與へる。又内部グリッド電流は纎條電壓が減少しても決して正にならぬのに反して,アノード電流は負より正に變化する。それ等の理由に就いても論じてある。

著者関連情報
© 電気学会
前の記事 次の記事
feedback
Top