抄録
本研究の目的は、臨時適性検査の受検率と年間交通事故率の調査を通じて、運転再開プログラムの有効性を検証することである。本研究では、2007年から2011年に新潟リハビリテーション病院にて自動車運転再開プログラムを実施した脳損傷者78名を対象に郵送法によるアンケート調査を行った。44名の対象者から回答が得られ、運転を辞めた13名が対象から除外され、残る31名が主な調査対象となった。アンケートの調査項目は運転状況に関する質問で構成された(例:「Q1.現在,車の運転をしていますか?」、「Q2.免許センターにて臨時適性検査を受検しましたか?」、「Q3.運転をしていない理由はなぜですか?」、「Q4.車の運転中に交通事故やヒヤリなどの危ない思いをしたことがありましたか?」、および「Q5.危ない思いをしたのはどのような状況でしたか?」など)。本研究では、Q2とQ4について解析した。Q2の臨時適性検査の受検率については、χ2検定を用いて我々の先行研究(2007)との比較を行った。臨時適性検査の受検率は我々の先行研究に比べて、有意に増加していた。年間交通事故率については、先行研究と比べると約2.6%と比較的低い傾向を示した。本研究の結果から、対象者への説明用のパンフレットおよび説明者のマニュアルの使用が臨時適性検査の受検率を増加させる可能性があることが示唆された。また、自動車運転評価や訓練およびその後の指導助言などは、年間交通事故率を減少させる可能性があることが示唆された。