全人的医療
Online ISSN : 2434-687X
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総説
哲学なき現代医学教育の問題点
―医学哲学の観点から―
杉岡 良彦
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2023 年 21 巻 1 号 p. 43-51

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抄録

かつて座学中心であった医学教育が,現在では臨床能力の向上も視野に入れ,より効率的に医学を学べるように改善されている.一方で,教養教育は大幅に縮小された.医学哲学は医学の根底を哲学的に問い,より良い医学を創造するために医学の全体像や本質を明らかにしようとする.本稿では医学哲学の立場から,医学が科学論,人間観,医療倫理・医療制度という三つの座標軸に規定されつつ,実現すべき価値を目指す学問であると理解する.ヴィクトール・E・フランクルは人間を心身の科学的理解に還元することなく,意味を求める実存的存在であるとし,次元的人間論という概念を提示した.また永田勝太郎らが実践する「全人的医療」は,人間の実存性を重視する人間理解に基づく.現代の医学教育に必要なのは,現代医学を反省し,人間の実存を重視する医療実践への勇気と情熱をもった医師を育成することである.その意味で,医学哲学は全人的医療の基礎となる学問だと考える.

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© 2023 公益財団法人 国際全人医療研究所
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