画像電子学会誌
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空間距離に基づくスクラッチ欠損補完
吉田 大海飯國 洋二
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2014 年 43 巻 3 号 p. 374-382

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抄録

本論文では, スクラッチ位置を既知として空間距離に基づいて補完を行うインペインティングを提案する. 画素値を手掛かりとする従来のインペインティングは, 画素値の連続性に基づいて画素単位で補完を行う画素ベースの方式と, 非欠損領域と欠損領域の整合性に基づいてパッチ単位で補完を行うパッチベースの方式に大別される. しかしいずれの方式も, スクラッチが広範囲かつ高密度に分布している場合は補完が困難となる. そこで, 欠損領域からの空間距離を信頼性とみなし, 欠損領域からの空間距離が最小となる画素を補完画素とする方法を提案する. 提案法は, 画素ベースの方式であるため, パッチベースの方式が必要とする, 補完用のまとまった非欠損領域がない画像にも有効である. しかも非欠損領域の画素値を参照せずに補完処理をするため, 従来の画素ベースの方式が補完基準とする, 画素値の連続性が評価できない画像にも有効である. さらに補完すべき画素値が欠損領域における位置のみで定まるため, 従来のインペインティングのように補完順序や補完途中の状態を考慮する必要がない. これにより, 従来法が必要としていた繰り返し処理が不要となるため, 極めて高速に処理できる. 実験では, 様々な画像を対象として提案法の補完性能を示す.

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© 2014 一般社団法人 画像電子学会
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