画像電子学会誌
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43 巻, 3 号
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ビジュアルコンピューティング論文特集号
論 文
  • 坂本 静生 , 甲藤 二郎
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 280-291
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    異なる視点から撮影した画像をもとに3次元情報を得ることは,コンピュータビジョンの重要なテーマの一つである.これまで多くのステレオ法が研究され,二眼・三眼・マルチベースラインの各ステレオや移動カメラのシステムへ適用されてきた.一般的に奥行き推定精度を上げるには,カメラ間距離を大きくするべきである.しかし距離を大きくすることは対応点探索を困難にする.現実には撮影対象となる物体は完全散乱反射特性ではないなど視点依存の輝度変動があり,視点間距離が大きくなるほど影響が大きい.この論文では,視点依存の輝度変動に頑健なマルチベースラインステレオ法を提案する.提案法では近傍カメラ間比較を総和する新しいコスト関数を導入する.最初に完全散乱仮定の下で,同一のベースライン長をもつ二眼ステレオと同等な奥行き推定精度であることを理論的に証明する.次に視点依存の輝度変動をもつ実際の画像セットを用いることにより,二眼ステレオだけでなく従来のマルチベースラインステレオと同等あるいは優れた精度をもつことを実験的に示す.
  • 堀田 富宝, 岩切 宗利
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 292-299
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    3Dセンシング技術の進展と普及により,取得した3Dデータから空間情報を分析し,理解する手法の需要が高まっている.なかでも,エッジ抽出は様々な3D情報処理の基礎技術として重要になると考えられる.その背景から,2次元画像のエッジ抽出手法を距離画像に適用する試みが数多くなされている.しかしながら,従来の手法では,値の変化が顕著な箇所(ノイズやオクルージョン) がエッジとして抽出され,輪郭構造を正確に捉えることができなかった.そこで,我々は3次元物体の稜線に注目し,3次元点群に含まれる交差面上のエッジを抽出する手法を検討した.本論文では,選択的に抽出した点群上の法線ベクトルの変化を定量的に評価することで,エッジを抽出する最も基礎的な手法を提案する.数値シミュレーション及び実測実験の結果から,提案方式のエッジ抽出手法が有効であり,従来方式と比べて最もよい特性を有することがわかった.
  • 小林 直樹, 北原 格, 亀田 能成, 大田 友一
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 300-308
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,道路監視カメラ映像を用いた夜間における車両の3次元位置推定手法を提案する.夜間は車両の前照灯が点灯しているため,道路監視カメラ映像において前照灯は安定した観測が可能である.しかし,画像上での前照灯位置のみでは,車両の3次元位置推定を行うことができない.本研究では,路面での前照灯の反射に着目し,前照灯と前照灯の反射の位置関係から車両位置を3次元的に推定する手法を提案する.路面での前照灯の反射は,前照灯と比べて弱く観測されることがあるため,前照灯の反射位置を単純な画像処理で検出することは困難である.本研究では,画像上での前照灯位置を手掛かりに探索範囲を絞り込み,前照灯の反射位置を空間的に走査することで,反射位置を検出する.この前照灯の反射位置を空間的に走査する手法は,探索範囲に道路標示等が存在して,路面の反射係数が一定でない場合,反射位置を誤検出することがある.本稿では,この問題を解決する時間方向走査手法についても述べる.実際の道路映像に適用して3次元位置が推定できることを示した.
  • 土居 意弘, 土橋 宜典, 田森 秀明, 山本 強
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 309-317
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    画像処理の応用では,複数の画像フィルタを組み合わせて特徴的な部分を抽出することが行われるが,問題に応じた設計を必要とする手間のかかる作業であるため,遺伝的プログラミングを用いて自動構築する提案がこれまでになされている.しかし,性能の安定性と画像処理に用いる数値パラメータを同時に生成する方法が課題となっている.本論文では,画像と数値のペアを処理するフィルタで表現されたプログラムを,学習サンプル群に対する処理性能の平均値及び最低値の2つの指標による多目的遺伝的プログラミングで,自動生成する手法を提案する.提案手法を,花の写真の背景除去課題に適用し,画像条件の変化に対して従来より安定した性能を得られること確認した.
  • 冨安 史陽, 平山 高嗣, 間瀬 健二
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 318-329
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    Mean-Shiftは,計算コストの低い極値探索手法である.特徴点追跡への応用では,特徴点の移動量や特徴量が大きく変化する場合に,Mean-Shift探索が局所解に陥り追跡に失敗することがある.本研究では,Kalman-Filter予測に基づく特徴点マッチングにより広域に対し粗な特徴点の対応付けを行った後に,その対応点からMean-Shift探索により狭域に対し密に特徴点を探索する手法を提案する.これにより,Mean-Shiftの長所を生かしつつ欠点を解決し,大域解を探索することで特徴点を追跡する.シミュレーション映像とスポーツ映像に対して特徴点の追跡実験を行い,提案手法が多くの特徴点を長時間追跡できることを確認した.
  • 檜垣 徹, 柴田 拓也, Raytchev Bisse, 玉木 徹, 金田 和文
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 330-337
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    本論文では,境界情報と画素値を持つ形状モデルを用いて心臓CT画像から左室を3次元セグメンテーションする手法を提案する.提案手法は,ラベル情報を持った形状モデルを心臓CT画像に位置あわせすることでセグメンテーションを行う.一般的な画像位置あわせ処理と同様に,提案手法では形状モデルと心臓CT画像の画素値に基づいた目的関数を用いて最適化する.それに加えて提案手法では,形状モデルの境界と心臓CT画像の境界との距離に基づいた目的関数も用いて最適化する.提案手法の特性や精度を検討するために,心臓の左心室を模したモデルデータを作成して,3種類の位置あわせ法(1. 境界のみ,2. 画素値のみ,3. 境界と画素値の両方: 提案手法)によるセグメンテーション結果を比較した.提案手法は,境界情報あるいは画素値のみのセグメンテーションよりも,高精度で収束も速く安定したセグメンテーションが行える特徴をあわせ持つことが明らかとなった.
  • 畠 康高, 豊浦 正広, 茅 暁陽
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 338-347
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    鉛筆画は,モノトーンを用いながら豊かな表現が可能であり,ラフなスケッチとしても完成度の高い芸術作品としても多くの人に親しまれている.我々はビデオを鉛筆画風動画に自動変換する手法を提案する.静止画を自動的に鉛筆画に変換できるLIC法を用いた鉛筆画生成法を用いる.しかし,静止画の鉛筆画変換手法を動画の各フレームにそのまま適用すると,ちらつきやシャワードア効果が発生する.この問題を解決するために,フレーム間で相関を保ったストロークを生成する新しい技術を提案する.前フレームのストロークを基に,輝度の変化に合わせて,不足するあるいは過剰なストロークのみを,追加または削除し,オブジェクトの移動に合わせてストロークの位置を移流することで課題を解決する.
  • 森本 有紀, 鶴野 玲治, 高橋 時市郎
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 348-356
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    本稿では,布の織り構造や糸・染料の要素に基づいて物理的に染色をシミュレーションする手法を提案する.本手法では横糸と縦糸の上下2層のセルを用いた布モデル内において,Fickの第2法則に基づき,染料の拡散を表現する.拡散係数は染色物理の理論に基づいて布繊維の多孔度や拡散経路の屈曲率などの染料や布のパラメータから算出し,布の織構造の違いや拡散の異方性などによる染色の特徴を表現する.染料の繊維への吸着には吸着等温式を考慮するモデルを提案する.また,簡単な染色技法を考慮するために,染料の拡散を防ぐ防染技法のシミュレーションを行う.結果画像からは本手法により染色独特の多くの特徴を表現できることがわかる.
  • 竹島 由里子, 藤代 一成, 高橋 成雄, 早瀬 敏幸
    原稿種別: 論文
    2014 年 43 巻 3 号 p. 357-366
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    流動場の基本的な特徴の1つとして渦が知られており,渦を解析することは,流れにおけるダイナミクスを理解する上で大変重要となってくる.しかし,非定常流データに対しては,従来の試行錯誤的な可視化方法では常に変化しつづける複雑な渦構造を捉え続けることは困難である. そこで本論文では,時系列流動データにおける渦の振舞いを分かりやすく可視化するための微分位相構造に基づくビジュアルデータマイニング手法を提案する.具体的には,渦中心における圧力値が極小になることが知られていることから,圧力場の微分情報に基づいて渦中心を特定し,位相情報から個々の渦領域を求め,時系列に沿ってそれらの渦を追跡する.また,すべての時刻で同一の色相伝達関数を用い,時刻ごとに明度を調整することで,流動場が劇的に変化した場合でも,時刻ごとの渦の変化だけでなく,色相から流動場の変動を把握することができる伝達関数を設計する.本手法の有効性を,ハイブリッド風洞における計測融合シミュレーションによって得られたカルマン渦列データを用いて検証する.
ショートペーパー
  • 竹内 広一, 田中 正行, 奥富 正敏
    原稿種別: ショートペーパー
    2014 年 43 巻 3 号 p. 367-371
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    低照度シーンの撮影ではしばしば赤外線照明が用いられる.赤外線照明は不可視であるため,時と場所を選ばず使用が可能であり,夜間の動物撮影や防犯カメラなどで利用されている.しかしながら,赤外線画像は色成分を持たないという問題がある.本論文では,ノイジーカラー画像を用いて,赤外線画像へのカラリゼーションを行う手法を提案する.提案手法は従来手法と比較して,入力画像のノイズと位置ずれにロバストなことが特徴である.
  • 吉田 大海, 飯國 洋二
    原稿種別: ショートペーパー
    2014 年 43 巻 3 号 p. 374-382
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    本論文では, スクラッチ位置を既知として空間距離に基づいて補完を行うインペインティングを提案する. 画素値を手掛かりとする従来のインペインティングは, 画素値の連続性に基づいて画素単位で補完を行う画素ベースの方式と, 非欠損領域と欠損領域の整合性に基づいてパッチ単位で補完を行うパッチベースの方式に大別される. しかしいずれの方式も, スクラッチが広範囲かつ高密度に分布している場合は補完が困難となる. そこで, 欠損領域からの空間距離を信頼性とみなし, 欠損領域からの空間距離が最小となる画素を補完画素とする方法を提案する. 提案法は, 画素ベースの方式であるため, パッチベースの方式が必要とする, 補完用のまとまった非欠損領域がない画像にも有効である. しかも非欠損領域の画素値を参照せずに補完処理をするため, 従来の画素ベースの方式が補完基準とする, 画素値の連続性が評価できない画像にも有効である. さらに補完すべき画素値が欠損領域における位置のみで定まるため, 従来のインペインティングのように補完順序や補完途中の状態を考慮する必要がない. これにより, 従来法が必要としていた繰り返し処理が不要となるため, 極めて高速に処理できる. 実験では, 様々な画像を対象として提案法の補完性能を示す.
  • 飯倉 宏治, 佐治 斉
    原稿種別: ショートペーパー
    2014 年 43 巻 3 号 p. 383-391
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    上空から地上の様子を眺めることのできる空撮画像は,我々に数多くの有益な情報をもたらすものである.特に空撮画像と地図との連携はITSや災害対策など幅広い応用が期待されており,近年では地表面を垂直に見下ろした空撮画像だけでなく,斜め下を見おろす,いわゆるパースペクティブな空撮画像(=鳥瞰画像)に対応するシステムも提案されている.これらのシステムにおいては航空機の位置や姿勢およびカメラの向いている方向などをリアルタイムに取得し,空撮画像と地図との対応付けを行なっている.本稿でも鳥瞰画像と地図との対応付けを取り扱う.提案手法ではGPSによる撮影時のおおよそのカメラ位置と画像処理を用いて鳥瞰画像の地図へのレジストレーションを実現する.撮影時における航空機の姿勢やカメラの光軸方向等に関する情報は使用しない.そのため,IMUなどの高価な装置を必要とせず,結果,保守費用の削減や,対応可能な航空機の数が増えるなどといった利点が考えられる.
  • 鹿嶋 雅之, 有馬 拓也, 佐藤 公則, 渡邊 睦
    原稿種別: ショートペーパー
    2014 年 43 巻 3 号 p. 392-396
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    掃除ロボットの分別収集・自動片付け機能を実現するための能動的物体認識手法について提案する.自律移動ロボットに装着した各種センサを用いて接近・センシングをくり返し,段階的に解析することにより,分別収集・自動片付けに必要な対象物体の識別を実現する手法について提案する.まず,距離画像をもとに候補物体を求める.次に,対象物にリング型のレーザー光パターンを投射し,このボケ量を推定することにより距離を測定・接近し,再投射したパターンの形状を解析することにより表面形状の識別を行う.また,屋内実験室で有効性評価実験を行った結果について述べる.
技術解説
  • 山本 奏, 田中 秀典, 安藤 慎吾, 片山 淳, 筒口 拳
    原稿種別: 技術解説
    2014 年 43 巻 3 号 p. 397-403
    発行日: 2014/07/30
    公開日: 2015/11/06
    ジャーナル フリー
    映像コンテンツのタイミングに同期した新しいAR(拡張現実感)を実現する,映像同期型AR: Visual SyncAR(ビジュアルシンカー)を開発した.映像に埋め込まれた電子透かしを高速検出するとともに,撮影画像上の映像領域を高速検出してカメラ姿勢を推定することで,映像の早送り・巻き戻しで再生位置が変化しても, 映像と時間的・空間的に同期したAR表示を行う. 映像コンテンツが演劇で言う「第四の壁」を越えて飛び出すような,映像と多様な情報を組み合わせた今までにない携帯端末向け映像表現が可能になる.なお,本技術は画像電子学会2013年度技術賞を受賞した.
連載技術解説
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