2019 年 48 巻 2 号 p. 248-257
スマートフォンのカメラで撮影した文字情報を認識し,それを基にした情報提供を行うアプリが普及しつつある.今後の発展が期待されるが,手を自由に使えない状況や,身体にハンディキャップがある方には利用しづらい.そのような状況での情報提供システムに適したデバイスとしてスマートグラスがあるが,著者らの知る限り,情景画像中の文字認識のために必要な性能を備え,作業や行動の邪魔にならないものは存在しなかった.そこで本稿では,環境中文字認識を利用した情報提供アプリケーションのためのウェアラブルシステムを開発した.試作したデバイスは情景画像中文字認識に耐えうるカメラと,装着したままの作業や行動に支障がないディスプレイを備える.また,外部PCまたはクラウド上のサーバと通信するための機能を持ち,そのためのAPIも整備した.さらに,試作デバイスはカメラ以外の入力デバイスを持たないため,そのような状況に適したユーザーインタフェースを開発した.路線図の駅名を認識して駅に関する情報を表示するサンプルアプリケーションを実装してユーザーインタフェース及びシステム全体の評価実験を行い,リトライが許されるタスクでは実用の範囲にあることを確認した.