印刷耐性のある不可視型で可逆の高耐性電子透かし法を提案する.付加するグリーンノイズパターンは,そのスペクトルが特定の帯域fmax~fminに閉じ込められ,プリンタではMTF応答性が高いが,人の視覚系では明視の距離では低い応答性を示すため視認されにくい.このため,埋め込み強度を強くした印刷物でも高画質性が保たれたまま透かし情報が保持される.埋め込みは,実空間(画素空間)にて埋め込みビットの0,1に対応した2種類の異なるパターンでブロック単位に埋め込む.グリーンノイズパターンと画像のスペクトルとは重なりが少ないため,画質に与える影響は少ない.抽出は周波数空間でスペクトルパターンを識別して行う.埋め込みパターンは専用の“鍵”でのみ除去できる.この鍵は乱数のSEED値を変えればほぼ無限に発行できるため,画像ごとに鍵を変えれば,盗まれても他の画像の透かしを除去できない.秘密性はこの鍵に集約されるため,アルゴリズムの公開は第三者からの攻撃の助長とはならない.また,ブロック型の課題であるブロック同期の方法として,グリーンノイズスペクトルと重ならないマーカパターンを埋め込み,実空間で抽出することにより,高精度に同期をとることが可能となる.本論文では,著作権保護およびAnnotationの2つの運用形態について検討した.Annotationでは信頼度を見ながら,埋め込み強度(gain)を自動調整することにより,抽出の信頼度を向上することが可能である.
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