画像電子学会誌
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システム開発論文
獣害対策のための監視カメラ向けアライグマ検出器の構築と評価
初田 慎弥大野 真史孟 林泉 知論(正会員)
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2019 年 48 巻 2 号 p. 237-247

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抄録

本稿は,獣害対策のための監視カメラシステムの実現を目指し,アライグマを対象に機械学習の害獣認識への適用評価と組込み実装の試行,さらにデータセットの構築とそれによる認識精度の向上を報告する.まず,鳥獣飼育施設で撮影した動物の画像を用いて構築したデータセットに基づき,HOG特徴量とサポートベクタマシンによる分類器(HOG + SVM),HOG特徴量とニューラルネットワークによる分類器(HOG+NN),畳み込みニューラルネットワークによる分類器(CNN)の3つを作成した.正答率と実行時間を評価・比較したところ,HOG+NNが速度で勝り,CNN が正答率で勝ることがわかった.この2つを監視カメラ等で用いられる組込みプロセッサ上に実装し性能の基礎評価を行ったところ,HOG+NNは正答率88.5%でVGAサイズの画像の処理に約8.7秒と比較的高速であったのに対し,CNNは94.5%と高い正答率を示したが45.8秒を要した.次に,正答率の高いCNNについて実際に寺社の監視カメラで撮影されたアライグマ画像を用いて評価した.寺社での実際の画像では正答率が20-30%に低下したが,複数の異なる画像セットを組み合わせることで60%程度に向上することを示した.さらに高速化を検討し,背景差分を用いて候補を絞ることで組込みプロセッサ上でも,数秒以下に抑えることができた.学習データを注意深く作成したCNNに,背景差分などの既存の画像処理技術を組み合わせることで,監視カメラ上でもアライグマ自動検出が実現できることがわかった.

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© 2019 一般社団法人 画像電子学会
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