本論文は,日本における筆跡鑑定を応用分野として想定した字形に基づく筆者異同識別に関するものである.筆者異同識別は筆跡個性に基づいて行われるが,筆者内変動が筆者異同識別性能を低下させるということが問題となっている.本論文ではまず最初に,筆者内変動には筆跡個性が存在していることを示す.次に,筆者内変動に潜んでいる筆跡個性を活用するために,筆者の平均筆跡と筆跡間のマハラノビス距離によって定義される新しい相違度を提案する.提案した相違度を使用した筆者異同識別実験では,漢字の場合1~2文字,ひらがな・カタカナの場合3文字,数字の場合5~6文字を使用すれば平均識別精度99.9%となる識別性能が得られた.