抄録
DTC広告とは処方用医薬品(Rx)の消費者への直接訴求広告であり,多くの国々において法規制等によりプロモーションとしての制限を受けているのが実態である。米国においては1997年以降,製薬企業の広告プロモーションとして確立されているがDTC広告を取り巻く問題点として,行政からみた医療費抑制政策等に対する影響,医薬情報の非対称性の観点から医師,患者,さらには従来の医師-患者関係に対する影響について議論が続いている。日本においては,一般消費者・患者の医療・医薬情報に対する意識の高まりと規制緩和の後押しを受け,製薬企業によるDTC広告プロモーションが展開されつつあり,今後の動向が注目されるところである。
本研究は,(1)日本におけるDTC広告の製薬企業,医師,患者・一般消費者に対する機能と役割を明らかにすること,さらに,(2)DTC広告が従来の医師と患者におけるコミュニケーションに与える影響についても明らかにすることを目的とし,質問票調査及び詳細面接調査により以下の考察が得られた。
(i)日本において薬剤名を示したDTC広告は,患者からの「治療薬の処方依頼」を強力に促進するものではないが,「治療薬」に関して患者と医師のコミュニケーションを促進する触媒としての役割を持つ。
(ii)日本では,DTC広告の情報が患者に正確に理解されなかった場合においてもDTC広告は医師と患者のコミュニケーションを促進するため,患者にとって有益となる。
(iii)日本では,DTC広告は医師にとっては患者の病気治療をサポートする機能を持つとともに「医療の質」を高めるきっかけとしての役割を果たす。ただし,広告される疾患の種類等により,DTC広告の機能と役割の程度は影響を受ける。