抄録
我が国では,医療安全対策を推進する上での基礎情報として,全国的な医療事故の発生頻度を把握することが求められており,その方法論の開発が急務となっている。本調査研究では,我が国において,遡及的診療録レビューにより有害事象を把握するための方法を確立することを目的とした。まず,有害事象を把握するための豪州の評価マニュアル,評価シートを日本の医療事情に合わせて改良を行った。そして,看護師が有害事象の可能性がある症例をスクリーニングする第一次レビューを行い,その後,医師が有害事象の最終判定を行うために第二次レビューを行った。その結果,入院症例における有害事象把握のために,診療録を活用し遡及的レビューを行うための方法論の適正性が明らかとなった。本手法は,全国的な有害事象を把握する大規模調査において活用することが可能と考えられた。