医療と社会
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特集:健康格差とソーシャル・キャピタルの『見える化』
見える化システムJAGES HEARTを用いた介護予防における保険者支援
鈴木 佳代近藤 克則JAGESプロジェクト
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2014 年 24 巻 1 号 p. 75-85

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抄録

介護予防に取り組む地方自治体が,自らの重点課題やその改善方法についてエビデンスに基づいた政策を立案・実行することは容易ではない。その原因のひとつは,そうした取り組みを支援するツールが不在だったことにある。JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study日本老年学的評価研究)プロジェクトは,WHO神戸センターが開発したUrban HEART(Urban Health Equity Assessment and Response Tool)を参考にして,全国25保険者31市町村のデータをもとに,22のコア指標と18の推奨指標からなる介護予防のための見える化システム「JAGES HEART」を開発した。このシステムは,介護保険者(市町村および広域連合)が自らの現状を把握して政策を立案・実行し,改善状況をモニタリングしてその効果を検証し,さらなる改善につなげるというサイクルを回すうえで有用なツールとなりうる。本稿では介護保険者をJAGES HEARTの利用主体と想定し,保険者による課題の発見・設定と改善取組を支援する具体的な過程について,事例や研究成果を交えて紹介する。
保険者によるJAGES HEARTの活用プロセスは,①保険者が取り組むべき重点課題の設定,②保険者内における重点対象地域の設定,③介入施策の立案とプログラムの実施,④政策による効果の評価の4段階からなる。
この4段階のプロセスにおけるJAGES HEARTの意義は,客観的で比較可能な数値による「見える化」を通じ,保険者職員が地域診断を行い課題に取り組む過程を,評価まで含めて総合的に支援することにある。市町村の主体性や知識を重視しながら,エビデンスに基づく介護予防の取り組みを支援するJAGES HEARTに期待されるところは大きい。

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© 2014 公益財団法人 医療科学研究所
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