医療と社会
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医療機関での電子カルテ利用とその導入行動
伊藤 ゆかり
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キーワード: 電子カルテ, 病院, 設備投資
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2003 年 12 巻 3 号 p. 25-38

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抄録
小泉内閣は,医療制度改革の中で,医療の情報化を進めるため,2006年度までに,六割以上の医療機関で電子カルテの導入を進める方針を掲げている。しかし,日本の医療の情報化は先進国の中でも立ち遅れており,電子カルテは,約1%の普及率となっている。それゆえどのような要因が病院の電子カルテ導入行動を決定付けるのか,それとも行動を阻害される要因が何かを分析することは,今後の医療政策を考えていく上で必要である。
そこで本稿では,病院における電子カルテの導入行動を実証的に検証している。本稿では,第一に病院の属性,病院が直面する状況,電子カルテの価格などの要因が電子カルテの導入行動にどのような影響を与えているかを開設者別と一緒にしたケースで検証を行った。第二に,開設者の属性ごとに導入行動に違いがあるかどうかを検定した。
今回の分析の結果より,電子カルテの導入は大都市にある教育病院や,診療科目数が多い専門的な診療科を多く持つ病院において導入が進んでいることが確認された。日本の病院でのCTの導入行動の場合と同じ様に,病院の競争要因が正に働いていることが確認された。開設者別の分析では,国立,公立,法人病院,その他の病院でそれぞれ電子カルテの導入行動に影響を与えている変数が異なっていた。また,開設者の違いによって導入過程の差異が影響し,電子カルテの導入行動が異なるということが明らかとなった。
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