医療と社会
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異なる年齢における健康の価値
土屋 有紀
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1996 年 6 巻 3 号 p. 123-136

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抄録

人が完全に健康であることの価値は,年齢に関わらず一定であるといえるであろうか。いわゆるQALYのパラダイムでは,異なる年齢での健康の価値は一定であるとされる。しかし一方ではDALY(Disability Adjusted Life Year)のように,年齢によって健康の価値に異なるウェイトを与えるという試みも行われている。この論文は,異なる年齢での健康の価値についてオランダで行われた実証研究について紹介し,同様の調査を日本でも行った結果を報告するものである。
この実証研究では3つの仮説が検証される。1.年齢とともに健康の価値は低下する。2.このことは回答者自身の年齢に左右されない。3.異なる年齢での価値は間隔尺度で計測することができる。オランダではこれらがいずれも受容された。日本ではまず, 回答者の年齢によって異なる結果が得られた。比較的若年の回答者からはおおむね右下がりの年齢・健康価値プロファイルが得られたが,比較的高齢の回答者のプロファイルは35歳前後をピークとする。仮説3.は受容されるが,回答の分散が大きいため結果は弱い。
今回の調査では数量化のできない回答が多く得られたため,これらを活用する意味で別途ノンパラメトリックな分析も行っている。

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