医療と社会
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6 巻 , 3 号
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  • 丸尾 直美
    1996 年 6 巻 3 号 p. 1-12
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    スウェーデンとデンマークの高齢者福祉サービスには発展段階ともいえるものがある。(1)選別主義の時代から(2)普遍主義化の時代へ,(3)ノーマライゼーションと医療・福祉の総合化の時代を経て,(4)在宅福祉・介護重視と基礎自治体への分権化,福祉区レベルでのネットワーク化へと動きつつある。さらに(5)福祉支出の抑制の中で,福祉供給の水準を維持しつつ,福祇費用の膨脹を避けるために,公的福祉供給に加えて,民間市場による供給と家族,ボランティア,非営利組織などのインフォーマル部門による福祉供給を最適にミックスする福祉ミックスが必要であるとの主張がみられる。日本はスウェーデンやデンマークとは逆に,高齢者福祉サービスの公的福祉供給の充実などによって福祉ミックス化を目指すことが当面は最適福祉ミックスへの道である。それがニューモデルの「日本型福祉社会」への道である(丸尾1984年)。高齢者介護サービスは,供給面は福祉供給ミックスで費用負担面は公費,社会保険,個人の自己負担の組み合わせで行うのが妥当である。日本の場合,日本型福祉ミックスが必要になるのは,一つには将来,高齢人口の総人口に対する比率が現在のスウェーデンよりもずっと大きくなり,公的福祉供給に依存しすぎると国民の税・社会保険負担が過大になるからである。しかし,それだけでなく21世紀の福祉社会は政府(公的)部門と民間企業(市場)部門の混合を基礎とする従来型の福祉国家を超えて,インフォーマル部門あるいは社会(コミュニティ)部門が再び重要な役割を果たすことが必要になる積極的理由があるからである。
  • 小椋 正立, 宮川 知之
    1996 年 6 巻 3 号 p. 13-46
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本格的な高齢化の到来を20年後に控えた現在,高齢者の介護はすでに大きな社会問題となっている。しかし,これまでの要介護者数の推計において,要介護者が置かれた家族の形態を考慮したものは見当たらず,1992年の国民生活基礎調査を用いて行った最近の推計がほとんど唯一の例外である。しかもこの推計では,単独世帯の介護必要率が他の家族類型と比べて著しく低い,という結果が得られている。一般的には,単独世帯が介護必要率はもっとも高いと考えられるので,これはきわめて逆説的な結果である。
    この研究結果を踏まえ,今回,私たちは1990年の国勢調査における「施設世帯」の入所者を性別,年齢および配偶関係に基づいて「一般世帯」に配分し,施設世帯の入所者を上記の介護必要者数に加えることにより,世帯類型ごとに性別,年齢階層別の介護必要率を再計算した。また,医療施設の入院者については,国勢調査のデータを用いて,性,年齢階層,配偶関係に基づいて,各世帯類型に比例的に配分した。このような帰属推計の結果,ほとんどの世帯類型の介護必要率はスムーズな年齢の増加関数となったほか,また他の世帯類型に比べて単独世帯の介護必要率はもっとも高く,また,はっきりとした性差も現れた。
    次に,こうして得られた世帯類型別の介護必要率を用いて,17都道府県について市町村別介護必要者数を推計し,介護保険の保険基盤についてのシミュレーションを行った。保険基盤の指標としてここでは,介護必要者1人当たりの40歳以上人口数と,介護必要者1人当たりの20歳以上人口数を選んだ。この結果,試算した都道府県全体では,保険基盤がもっとも弱い岡山県は,もっとも強い埼玉県の約半分の水準であり,また,各県の市町村間でもかなり顕著な格差が確認された。全国一律と仮定した介護必要率は,実際にはかなりの地域差が存在するため,市町村単位の保険加入者の負担の格差は,ここで試算したものよりもそれだけ大きなものとなる可能性もある。
  • 川渕 孝一
    1996 年 6 巻 3 号 p. 47-83
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    入院医療管理料(投薬・注射・検査をすべて包括化した看護料)を取得した病院では,入院患者に対する検査および投薬の種類と回数の減少傾向があるといわれているが,その実態については必ずしも明確になっていない。そこで,本研究では,入院医療管理料取得病院の薬剤統計を使ってどんな薬がどれだけ変化したかを明らかにした。また,当該病院の医師に対するアンケート調査や患者の日常生活動作(ADL)調査に基づいて,これからの高齢者医療および薬剤のあり方も検討した。
    具体的には4病院のケーススタディを通じて,平成2年4月に新設された入院医療管理料制度(一部定額払い制)が老人医療の中の薬剤に及ぼす影響について調べたが,病院によって相当実態に違いがあることがわかった。
    しかしながら,いくつかの例外はあるが,総じて言うと,定額制の導入により医薬品の処方品目数,使用量ともに減少している病院が多い。薬効別では,(1)循環器系に作用する薬剤(コード8),(2)消化器系に作用する薬剤(コード10),(3)神経系に作用する薬剤(コード11)の減少が著しい。
  • 満武 巨裕, 西村 由美子
    1996 年 6 巻 3 号 p. 84-92
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本論文の課題は,産科婦人科の専門医を対象として行った子宮全摘出の診断に関する質問紙調査に基づき,日・米・英3国の医師の診断の特性と治療方針の決定の異同を比較検討することである。が,本論文を含めてのわれわれの一連の研究の課題は,子宮全摘出手術の分析を手掛かりとして,最終的には特定の手術の実施率に地域差を生じさせる要因を構造的に明らかにすることにある。
    最近実施した日本での調査は,産科婦人科医3,000人を対象とした郵送による質問紙調査で,有効調査票634を回収した(有効回答率21.1%)。調査では,米国および英国で実施した際と同様の調査票を用い,病歴を添えた6人の架空の患者のケースを提示し,それぞれのケースについて子宮全摘出手術を行うか否かについて二者択一での回答を求めた。提示した6ケースは,いずれも各国に共通して高い頻度で子宮全摘出手術の適応症となっている症例を代表するように設計されている。米国・英国については,すでに1990年に調査を行っており,その結果については,すでに本誌Vol.5,No.3(19.95)に報告した。
    本報告では日本での調査結果を中心に日米英3国の医師の診断にみられる違いを検討する。米国・英国の医師の間には,各ケースで提示した症例をめぐって,ほとんど意見の相違が見られなかったのであるが,日本の医師は,これら米英両国の医師とは異なる回答傾向を示した。一般的な傾向として,日本の医師は,米国・英国の医師に比べて「手術を行う」と診断を下す割合が低い。特に,症例が癌のような生命を脅かす危険のあるものでなく,手術はむしろ患者のQOLを上げるためというようなケースでは,手術の意向は米英に比べて著しく低く,特徴的であった。一方これとは逆に,症例が将来の癌への移行の可能性を懸念させるものであるケースについては,「手術をする」と診断を下す割合が英米に比べてかなり高く,当面は手術の決定を留保し,経過を観察する,あるいはさらに検査を行うと考えていると推測される米英の医師とは異なる結果であった。
  • 山田 武, 角田 由佳
    1996 年 6 巻 3 号 p. 93-108
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,正看護婦の指示業務が病院での看護サービスの生産に与えている影響について分析することにある。看護要員(正看護婦・准看護婦・看護業務補助者)はそれぞれ患者のケアに関わるが,正看護婦と准看護婦・看護業務補助者の明らかな違いは,正看護婦だけがほかの看護要員に対してケア業務に関して指示することができる点にある。反対に,准看護婦や看護業務補助者がケア業務を実施するためには,正看護婦の指示が必要になる。したがって,指示業務は看護サービスを生産するためのモニタリングとみなすことができる。
    われわれは正看護婦の指示業務に着目し,病院の費用最小化モデルから次の結論をえた。准看護婦や看護業務補助者を雇用するためには正看護婦の労働時間の一部を指示業務に振り分けなければならない。准看護婦や看護業務補助者が多くなると指示業務時間も長くなる。これは准看護婦や看護業務補助者の労働コストを引き上げることになるから,准看護婦や看護業務補助者は過小に雇用され,反対に正看護婦は過剰に雇用される。さらに,指示業務の増加は准看護婦や看護業務補助者の労働コストを引き上げるから,病院は准看護婦や看護業務補助者の雇用を減少させ,正看護婦の雇用を増加させる。もっとも指示業務に振り分けられる時間は,患者の状態や,看護要員の能力などにも依存する。また,このモデルをつかって基準看護の選択を分析することも可能である。
  • 田村 誠
    1996 年 6 巻 3 号 p. 109-122
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    本稿では,「自己決定型医療」の問題点を整理した上で,その解決の方向性を模索し,さらに一つの具体的提案を示した。
    1.問題点
    患者側の問題として,医療者の説明の理解困難さ,医療者への遠慮等が考えられた。医療者側の問題としては,説明の時間不足,開示データの不足,自己決定の範囲に関する患者との認識の相違,医療者のモラルダウンが考えられた。また,自己決定型医療の進展を通じて個の尊重が一層進むことにより,サービスの一律化を余儀なくされる社会保障制度との齪齬が危惧された。
    2.問題解決の方向性
    5つの方向性を示した。第1には,現行の医療では「口頭」によるコミュニケーションスタイルが一般的であるが,それに加えて,「文書」による情報提供を行い,患者の自己決定サポートを行うというものである。第2には,患者に開示するためのデータ蓄積を行政や学会主導等で行うことである。第3には,医療者一患者間で,自己決定を行いたい範囲について食い違いが生じる可能性についての研究蓄積,および医療者に考え方の転換が求められることである。第4には,医療者と患者の価値観をできる限りマッチさせるために,医療機関が治療方針を明示し,医療に関わる価値観を市場セグメントのキーとしたマーケティングを行うことである。第5は,ここまでの解決の方向性のほとんどすべてに共通して,医療機関,医療者個々の努力に委ねるだけでなく,制度上の対応が必要という点である。
    3.一つの具体的提案
    上の5 つの方向性のうち, 1 番目, 2 番目と最後のものを主に含め, 具体的提案を検討した。その概要は以下のとおりである。
    情報開示,および患者側(家族含む)の意思決定のステップを一連の診療プロセスの中で明確に位置づけるべく,特定の治療法(手術,投薬等)・検査法について,その効果,副作用,リスク等を記した文書を,治療・検査実施前に患者に手渡し,それを充分に吟味した上で,患者がその治療・検査実施を承諾するステップを確保する制度を公に創設し,かつ,それと診療報酬制度等との関連性をもたせるもの,である。
  • 土屋 有紀
    1996 年 6 巻 3 号 p. 123-136
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2012/11/27
    ジャーナル フリー
    人が完全に健康であることの価値は,年齢に関わらず一定であるといえるであろうか。いわゆるQALYのパラダイムでは,異なる年齢での健康の価値は一定であるとされる。しかし一方ではDALY(Disability Adjusted Life Year)のように,年齢によって健康の価値に異なるウェイトを与えるという試みも行われている。この論文は,異なる年齢での健康の価値についてオランダで行われた実証研究について紹介し,同様の調査を日本でも行った結果を報告するものである。
    この実証研究では3つの仮説が検証される。1.年齢とともに健康の価値は低下する。2.このことは回答者自身の年齢に左右されない。3.異なる年齢での価値は間隔尺度で計測することができる。オランダではこれらがいずれも受容された。日本ではまず, 回答者の年齢によって異なる結果が得られた。比較的若年の回答者からはおおむね右下がりの年齢・健康価値プロファイルが得られたが,比較的高齢の回答者のプロファイルは35歳前後をピークとする。仮説3.は受容されるが,回答の分散が大きいため結果は弱い。
    今回の調査では数量化のできない回答が多く得られたため,これらを活用する意味で別途ノンパラメトリックな分析も行っている。
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