抄録
本研究では、子どもの自己決定に関する保護者の認識の実態と、それに影響を及ぼす諸要因を検討するため、A県の保護者83名を対象に調査研究を実施した。主成分分析の結果として、自己決定スキルの重要度、自己決定力、自己決定の支援の3成分が検証され、高い内的一貫性が示された。また、保護者は自己決定スキルの重要度に対する評価が高い傾向が見られたが、自己決定の支援と自己決定力の評価の低さに課題がみられた。各成分に影響する要因として、「障害の程度」は「自己決定力」への影響が示唆された。各成分得点の関係について、「自己決定の支援」は「自己決定力」への影響が示唆され、家庭環境における「自己決定スキルの重要度」は「自己決定の支援」への影響が示唆された。以上から、障害の程度に関わらずすべての子どもが自己決定の指導と支援により自己決定力を向上できることを保護者に認識させることが重要である。家庭環境における自己決定の支援を促進するため、保護者の自己決定スキルの重要度に注目する必要性が指摘できる。また、自己決定の支援の促進や学校と家庭との連携などにより、子どもの自己決定力の向上が期待できる。