2019 年 6 巻 p. 10-26
本研究は肢体不自由児のキャリア教育で取り上げられる指導内容について整理し、実態に応じた指導内容について検討することを目的とした。全国の肢体不自由特別支援学校25校に、キャリア教育で取り上げられる指導内容についてのアンケートを実施し、因子分析や重回帰分析を行い、学部や実態等で比較を行った。因子分析の結果、キャリア教育で取り上げられる指導内容として、「健康の維持増進と心理的充実」「学力・認識力の育成」「社会性の育成」「家庭生活力の向上」「基本的生活習慣の確立」の5つの因子が抽出された。「健康の維持増進と心理的充実」が抽出されたことより、教員がキャリア発達と心身の発達との関連を意識していることが示唆された。重回帰分析の結果、各因子について学部や実態において有意差が確認された。近年は障害が重度化・重複化・多様化しており、各教員が児童生徒個々の実態を丁寧にとらえ、個に応じた指導をしていることが示唆された。指導内容が自立活動とも関連があったことから、自立活動とキャリア教育を関連付けて指導することにより、肢体不自由児童生徒のキャリア発達を促そうとしていることが推測された。