抄録
転倒(転落を含む)はパーキンソン病(PD)で頻度が高く, PDの治療のみならず, 医療安全や医療経済においても重要な課題である. PDの転倒について, 筆者らのデータを紹介するとともに, 文献的考察を加えて概説した. PDの転倒患者率は, 調査期間1-2ヵ月の場合に約1/3, 1年間の場合は約2/3であり, 入院患者1人1日当りの転倒事例率は4‰であった. 起立, 方向転換, 物を取る時などにバランスを崩したり, 歩行時にすくみ足やっまずいて転倒することが多く, 同一患者の転倒状況は画一的である. 危険因子には, 長い罹病期間, PDの重症度, 転倒の既往, 姿勢反射障害, レボドパの反応不安定などがある. 二次的外傷は軽症のものが多いが, 時には骨折や慢性硬膜下血腫などの重篤な外傷がおこり, 活動性の低下をもたらす. 骨折部位は肋骨と大腿骨近位部が多い. 転倒防止対策には, 重要な転倒要因に応じて学際的でtailor-madeなアプローチが必要である.