2010 年 49 巻 1 号 p. 14-19
インクジェットにおいてノズルからの水分蒸発による目詰まりは信頼性確保にとって重要な課題である.インク噴射に関する挙動を解析するため,飛翔するインク滴の物性を把握することは有効であるが,微小であり過渡的な現象であるため直接測定は困難である.そこで飛翔するサテライト滴が主滴に衝突することにより生ずる液滴振動を観察することを試みた.その結果,飛翔滴の物性値を予測することが可能となり,水分蒸発による粘度上昇と噴射力低下現象の関連性を検討した.さらに初期粘度の異なるインクを用い噴射に必要なピエゾ駆動電力について検討した結果,放置後の噴射力低下はインク自身の粘度上昇が支配的であるが,ノズルに形成される固体成分薄膜層の寄与も僅かに存在する可能性があることが示された.