日本画像学会誌
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Imaging Today
質感認知の神経基盤を探る
郷田 直一
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2018 年 57 巻 2 号 p. 197-206

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抄録

我々は様々な物体を見て,金属·石材·木材などその素材を容易に見分け,さらにそれらの手触りや状態といった多様な「質感」を感じとる.近年,脳神経科学の分野においても,質感認知の仕組みについての関心が高まり,現実世界に見られるような複雑な視覚入力から素材や質感に関わる情報―物体表面の複雑な反射特性や微細な三次元構造 (テクスチャー) に関する特徴―を脳がどのように取り出しているのか,また脳はその情報をもとにどのようにして素材のカテゴリーや質感を認知するのか,などを明らかにすることを目指した研究が進められている.また,質感の特徴の一つといえる多感覚的な性質にも注目が集まり,その神経基盤を探る試みも行われている.本解説では,視覚質感認知に関わる脳の階層的·並列的ネットワーク,その各階層における情報表現と変換,および多感覚性を中心に,質感認知に関するこれまでの脳神経科学的知見について紹介する.

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© 2018 一般社団法人 日本画像学会
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