本稿は読み書きでの紙と電子メディアの比較研究からわかったことを概観し,読み書きを支援するデジタル環境の構築に向けた示唆を示すものである.これまでの研究から,電子機器での読みが紙での読みに及ばない点は,「見やすさ」よりも「扱いやすさ」に起因するところが大きいことがわかってきた.また,キーボード入力は認知負荷が高く,電子的な描画ツールはデザイン問題の解決よりも描画結果の整形に走りがちであることが指摘されている.電子メディアのこうした問題点を克服するため,(1)見やすさよりも扱いやすさを追究すべきこと,(2)読み書き中の行為を認知負荷低くできるようにすること,(3)誤った思考モードを導かないようにすること,を設計示唆としてまとめる.