レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集(市販後適正使用に関する最近の話題)
電子診療情報に基づく薬剤疫学調査を活用した医薬品の安全対策への取り組み
山田 香織石黒 智恵子宇山 佳明
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2016 年 6 巻 3 号 p. 319-325

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抄録

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) は, 従来, 主として副作用報告や製造販売後調査結果等の情報に基づき医薬品の安全性を評価してきた. PMDAは市販後の医薬品の安全対策を強化し, 従来のプロセスの限界を補うためのさまざまな取り組みを行ってきた. 本稿では, PMDAにおけるいくつかの取り組みについて述べる. PMDAは平成21年にMIHARI Project-Medical Information for Risk Assessment Initiativeを開始した. 本事業は, 電子診療情報を用いた薬剤疫学調査を安全対策に活用した新しい体制を構築することを目的としている. 本事業では, 多くの試行調査を実施し, 薬剤疫学研究におけるレセプトデータ, 病院情報システムデータ, DPCデータの特性を評価してきた. 試行調査の成果や経験に基づき, 平成26年度からは本格運用を開始した. また, 平成23年度には, 市販後安全対策のために国内の複数の医療機関のさまざまな電子診療情報を解析するための新たなシステムを開発するプロジェクトを開始した. このシステムをMID-NET®と称している. 現在は, 平成30年度からのMID-NET®の本格運用に向けて, パイロット試験を含めデータの信頼性や解析バリデーションに関する試験を実施している. PMDAはこのような活動を通して公衆衛生の向上に貢献するため, 今後も継続的に対応を進めていく予定である.

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© 2016 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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