2020 年 59 巻 3 号 p. 325-329
希土類イオンは,その本来の電子状態から非常に色純度の高い発光を示す.一般に,光励起による希土類イオンの発光は,吸光係数の高い有機配位子を用いた分子エネルギー移動によるアンテナ効果によって促される.最近,トリボルミネッセンスを示す希土類錯体が頻繁に発見されている.しかし,この原理にはいくつかの仮説があり,光励起による発光に対し,トリボルミネッセンスは不明瞭な点が多い.そこで,結晶を破砕するときに希土類から発光する現象を示す系について,発光強度に対する刺激の程度を簡便かつ定性的に理解するため,ドロップタワーシステムを用いた評価法について解説する.また,希土類錯体には,キラルな部位を配位子に導入したユウロピウム錯体EuLvalを用いた.