日本画像学会誌
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59 巻, 3 号
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論文
  • 藤崎 日奈子, 面谷 信
    2020 年 59 巻 3 号 p. 278-284
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    近年,液晶タブレット端末や電子ペーパー端末が,紙のように手書き可能な媒体として様々な場面での応用を期待されている.本研究では電子媒体上の手書き作業について,作業効率や快適感に関して紙と比べての優劣やその原因を明らかにすることを目的とした.紙,液晶タブレット,および電子ペーパーに表示された文書への書き込み速度と媒体の使用感に関して比較を行い,電子媒体上での書き込みの作業効率および快適感の優劣比較,原因分析を行った.作業課題としては,日本語文字の書き込み作業,アラビア数字の書き込み作業,マーキング作業 (丸付け) の3課題を用意した.作業対象としては,異なるフォントサイズの3種類の文書を用意した.いずれの作業課題および評価項目においても,電子ペーパーは紙と同等か僅かに下回る評価結果,液晶タブレットは他の2媒体よりも顕著に低い評価結果を示した.

    本研究は特定の商用端末を用いた限定的実験の結果を示すものではあるが,電子ペーパーが,紙媒体を代替する媒体として期待できることを示唆する.

Advanced Technology
  • 加藤 昌子
    2020 年 59 巻 3 号 p. 286-291
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    新しい物質群ソフトクリスタルの概念が提案される.ソフトクリスタルは,構造秩序を保ったまま触れる,擦る,蒸気に曝すなどの極めて弱い刺激により,構造秩序を保持したまま色や発光,形状変化などの目に見える変化が可逆的に起こる物質群と定義される.ソフトクリスタルは,有機結晶,無機結晶,有機―無機複合結晶 (金属錯体) などを包含する.本稿ではソフトクリスタルを提唱するきっかけとなった興味深い例として,ベイポクロミック結晶,メカノクロミック結晶,超弾性を示す有機結晶を紹介する.これらの現象は科学的な観点から非常に興味深く,様々な系に発展するとともに,物性,理論研究に基づき深化している.また,視覚的なセンシングや高精度に進化した電子デバイスへの応用も期待される.最新のトピックは本特集の記事を参照されたい.

  • 髙見澤 聡, 高崎 祐一, 佐々木 俊之
    2020 年 59 巻 3 号 p. 292-300
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    超弾性とは,応力負荷により塑性変形した固体が除荷とともに自発的に形状回復する特性である.その特異な機械特性を利用して,いわゆる形状記憶合金は幅広い分野で実用化されてきた.一方で,超弾性は1932年のAu-Cd合金における発見以降,一部の合金のみにみられる特殊な性質と考えられており,機能開拓という点で課題があった.髙見澤研究室ではこの長年の常識を覆し,有機結晶における超弾性,「有機超弾性」を発見した.その後の研究により,有機結晶における超弾性や強弾性 (自発的な形状回復を示さない可逆的塑性変形性) が,従来の考えよりも一般的な現象であることを見出してきた.本稿では,有機超弾性および形状記憶効果の発見,金属錯体を含めた多様な分子性化合物結晶の超弾性·強弾性の紹介とその特徴を説明する.最後に,超弾性や強弾性と異なり可逆性を持たない塑性変形でありながら,結晶性を維持したまま数百%以上の大変形を可能とする 「有機超塑性」の発見について述べる.

  • 生越 友樹, 角田 貴洋, 山岸 忠明
    2020 年 59 巻 3 号 p. 301-307
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    我々は,独自に開発した柱状の環状分子 「ピラー[n]アレーン」を基としたソフトクリスタルの開発に取り組んでいる.ピラー[n]アレーンは分子認識サイトとなる空孔を有した構造であり,その空孔に適合したゲスト分子を形状選択的に取り込むことができる.そのため,どのようなゲスト蒸気が選択的に結晶に取り込まれるかが明確である.またピラー[n]アレーンは,相互作用が弱いため通常は取り込むことが困難なアルカン蒸気を結晶中に取り込むことができる.さらにピラー[n]アレーンは,機能性官能基を位置選択的に導入することができ,優れたデザイン性を有している.アルカン蒸気の形状選択的な取り込み能力と優れたデザイン性を利用することで,結晶中へのアルカン蒸気の選択的取り込みを 「目で見える」色変化,状態変化といった応答に変換し,検知することが可能となった.

  • 中山 尚史, 小畑 繁昭, 後藤 仁志
    2020 年 59 巻 3 号 p. 308-315
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    穏やかな外部刺激に応答し,その形状,色,発光等の物性が変化する 「ソフトクリスタル」の相転移過程を解析するための計算機シミュレーション技法とその応用事例を紹介する.結晶の構造パラメーター (非対称単位内分子構造,空間群,格子定数) に依存するポテンシャルエネルギーは,分子内と分子間に働く相互作用を分子力学に基づく結晶力場で定義される結晶エネルギーという熱力学的な状態量で評価される.有機金属錯体等を結晶力場で扱う場合,新しい力場パラメーターの開発が必要なことが多い.ここでは,新しいパラメーターを開発し,結晶構造の再現に成功した事例を示した.また,結晶構造予測手法に回折パターン類似度を評価指標として実装することにより,未知の結晶構造とその物性を予測することに成功した新しい手法を紹介する.ポテンシャルエネルギー面上にある結晶多形を明らかにすることで,ソフトクリスタル現象の解明に貢献することが期待されている.

  • 嘉部 量太
    2020 年 59 巻 3 号 p. 316-324
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    蓄光材料は光エネルギーを吸収し,長時間にわたる発光を示す.既存の蓄光材料は全て無機材料で構成されるのに対し,我々は有機材料のみで構成される有機蓄光システムを見出した.有機蓄光システムは電子ドナー材料とアクセプター材料から構成され,励起状態ではなく電荷分離状態にエネルギーを蓄積する.レアメタルを必要としない,溶液から成膜可能,柔軟性と透明性の両立が可能など従来の無機材料では実現が難しい特色を有する.有機蓄光の発光はドナー材料のHOMO準位とアクセプター材料のLUMO準位差によって制御される.また,それぞれの材料の三重項励起状態が蓄光発光過程に影響する.蛍光ドーパント添加による発光色制御や長寿命化も可能である.

  • 長谷川 美貴, 大曲 仁美
    2020 年 59 巻 3 号 p. 325-329
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    希土類イオンは,その本来の電子状態から非常に色純度の高い発光を示す.一般に,光励起による希土類イオンの発光は,吸光係数の高い有機配位子を用いた分子エネルギー移動によるアンテナ効果によって促される.最近,トリボルミネッセンスを示す希土類錯体が頻繁に発見されている.しかし,この原理にはいくつかの仮説があり,光励起による発光に対し,トリボルミネッセンスは不明瞭な点が多い.そこで,結晶を破砕するときに希土類から発光する現象を示す系について,発光強度に対する刺激の程度を簡便かつ定性的に理解するため,ドロップタワーシステムを用いた評価法について解説する.また,希土類錯体には,キラルな部位を配位子に導入したユウロピウム錯体EuLvalを用いた.

  • 南 晴貴, 高橋 亮太, 中村 一希, 小林 範久
    2020 年 59 巻 3 号 p. 330-340
    発行日: 2020/06/10
    公開日: 2020/06/10
    ジャーナル フリー

    生体高分子であるDNAは,様々な機能分子をその構造中に取り込むことで 「DNAソフトクリスタル」ともいうべき構造体の形成が期待される.本総説では,DNAとルテニウム (Ru(II)) 錯体との相互作用による組織体の形成とその特徴的な光学特性,および電気化学素子への展開について解説する.透明電極上に成膜したサケの精巣由来のDNA膜に,電気化学発光体として知られるRu(bpy)32+を電気泳動によって導入し,DNA/Ru(bpy)32+ハイブリッド膜を作成した.このハイブリッド膜にはDNAとRu(bpy)32+から構成される特徴的なメゾスコピック構造体の形成が認められた.このDNA/Ru(bpy)32+ハイブリッド膜を修飾した電極を用いて交流駆動型電気化学発光素子を作成したところ,驚くべきことにサブミリ秒以下 (駆動周波数:10kHz) という,従来系では到底達成できなかった大幅な高速応答化を実現した.さらに,DNAとキラルRu(II)錯体の複合によってエナンチオ選択的発光増強が認められたことから,DNA/Ru(bpy)32+ハイブリッド材料を組み込んだ電気化学発光素子によって円偏光発光のような特徴的なキラル光学特性の実現可能性が示唆された.

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