日本画像学会誌
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DNAとRu(II)錯体の組織化による特異的光学特性発現およびその電気化学素子応用
南 晴貴高橋 亮太中村 一希小林 範久
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2020 年 59 巻 3 号 p. 330-340

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抄録

生体高分子であるDNAは,様々な機能分子をその構造中に取り込むことで 「DNAソフトクリスタル」ともいうべき構造体の形成が期待される.本総説では,DNAとルテニウム (Ru(II)) 錯体との相互作用による組織体の形成とその特徴的な光学特性,および電気化学素子への展開について解説する.透明電極上に成膜したサケの精巣由来のDNA膜に,電気化学発光体として知られるRu(bpy)32+を電気泳動によって導入し,DNA/Ru(bpy)32+ハイブリッド膜を作成した.このハイブリッド膜にはDNAとRu(bpy)32+から構成される特徴的なメゾスコピック構造体の形成が認められた.このDNA/Ru(bpy)32+ハイブリッド膜を修飾した電極を用いて交流駆動型電気化学発光素子を作成したところ,驚くべきことにサブミリ秒以下 (駆動周波数:10kHz) という,従来系では到底達成できなかった大幅な高速応答化を実現した.さらに,DNAとキラルRu(II)錯体の複合によってエナンチオ選択的発光増強が認められたことから,DNA/Ru(bpy)32+ハイブリッド材料を組み込んだ電気化学発光素子によって円偏光発光のような特徴的なキラル光学特性の実現可能性が示唆された.

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© 2020 一般社団法人 日本画像学会
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