2023 年 62 巻 1 号 p. 35-46
過去20年以上にわたり超高精細画像入力,分析,表示・配信に関する研究を重ねてきた.その活動は京都大学工学研究科の先端イメージング工学研究室の研究が基盤となっている.焦点を当ててきた一連の活動は,国宝クラスの文化財の超高精細デジタル化である.世界には,戦争,貧困,無知といった人災や,地震,洪水,津波などの自然災害によって危機にさらされている文化財が数多く存在する.そうした貴重な美術品や文化遺産を後世に伝えるために何ができるか.このような問題意識のもと,私たちは文化財を記録,保存,分析するための高度な画像技術を開発し,利用を進めてきた.過去4年間は活動を拡大し,現在は自社開発の最先端の超高精細フラットベッドスキャン技術と高精細360度パノラマVRカメラシステムを使って,オンラインまたはオフラインで閲覧可能なデジタルコンテンツを制作している.画像の取得,分析,表示・閲覧に至るまで,デジタル化のあらゆる側面をカバーした研究を続けている.本稿では,京都大学工学研究科の先端イメージング工学研究室,そしてその活動を引き継いだ先端イメージング工学研究所および株式会社アートリサーチがどのような理念を持って活動を進めてきたかを示すとともに,様々な文化財をデジタルアーカイブ化した実際のプロジェクトの事例を紹介する.