日本画像学会誌
Online ISSN : 1880-4675
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62 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
巻頭言
論文
  • 岡田 淳之, 内藤 裕義
    2023 年 62 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    Time-stretched pulse (TSP) と高速Fourier変換 (fast Fourier transform, FFT) を用いた高速のインピーダンス分光系を構築し,蛍光発光ポリマーであるSuper Yellow (SY) を発光層に用いた高分子発光ダイオード (polymer light emitting diodes, PLEDs) の複素インピーダンス測定および移動度決定を行った.周波数応答アナライザー (frequency response analyzer, FRA) を用いた従来手法では複素インピーダンススペクトルの測定に積算なしで48.9sを要したが,TSPとFFTを用いた本手法では3.0sまで短縮することができた.さらにニューラルネットワークを用いた機械学習モデルを構築し,TSPとFFTを用いた本手法で得た実験的な複素インピーダンススペクトルを機械学習モデルへ入力することでドリフト移動度の決定を行った.手作業で求めた場合の値と同等の値を機械学習により得ることができ,ドリフト移動度の決定に必要な時間は手作業による150sから10msに大幅に短縮できることを実証した.TSPとFFTを用いた高速測定手法と機械学習による移動度決定法はPLEDをはじめ有機半導体の電子物性の決定に要する時間と手間の大幅な削減を可能にする.

Imaging Today
  • 大関 勝久
    2023 年 62 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    2012年に本誌でアーカイブ特集が組まれた当時,映画を含む映像分野では,それまで撮影や映写,保存を担ってきた銀塩写真感光材料の急激な供給量の減少が生じる一方で,代替されるべきデジタル技術のデータ保存における弱点が指摘され,大きな問題となっていた.その後デジタル技術の進展とともに高画質化が進み,映像のデータ量は飛躍的に増加した.また,フィルムの上映機会は激減し,多くのフィルムがデジタル化を待っている.このような状況下,映像データの保存における課題は変化しつつ,しかし依然として大きな問題であると考えられる.本稿では,多様化する課題や取り組みについて考えてみたい.

  • 高橋 彰, 北本 朝展, 矢野 桂司, 佐藤 弘隆, 河角 直美
    2023 年 62 巻 1 号 p. 23-34
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    デジタルアーカイブは資料の保存・記録の価値が注目されるため,その共有や連携に関しても,アーカイブ機関に収蔵された資料同士を共有するためには,どのような連携が必要かという資料中心型の議論に陥りやすい.資料の保存・記録はデジタルアーカイブの最も重要な役割の一つであるが,一方で,活用の促進には,誰がどのように使うのかという活用者側の視点も不可欠であり,その中でも実世界とデジタルアーカイブを結びつける方法論や実践が求められている.本稿では実世界である地域社会の課題や未来を考えるために景観写真のデジタルアーカイブがどのように貢献できるかについて実践例を紹介する.はじめに「景観」と「景観写真」の用語の定義について整理し,その後,「京都の鉄道・バス写真データベースのデジタルアーカイブと活用」と「スマートフォンアプリメモリーグラフを用いた今昔景観比較」の2つの実践例を通して,見えてきた課題と今後の展開について述べる.

  • 井手 亜里, 赤坂 輝実, Jay Arre Toque, 角 美枝
    2023 年 62 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    過去20年以上にわたり超高精細画像入力,分析,表示・配信に関する研究を重ねてきた.その活動は京都大学工学研究科の先端イメージング工学研究室の研究が基盤となっている.焦点を当ててきた一連の活動は,国宝クラスの文化財の超高精細デジタル化である.世界には,戦争,貧困,無知といった人災や,地震,洪水,津波などの自然災害によって危機にさらされている文化財が数多く存在する.そうした貴重な美術品や文化遺産を後世に伝えるために何ができるか.このような問題意識のもと,私たちは文化財を記録,保存,分析するための高度な画像技術を開発し,利用を進めてきた.過去4年間は活動を拡大し,現在は自社開発の最先端の超高精細フラットベッドスキャン技術と高精細360度パノラマVRカメラシステムを使って,オンラインまたはオフラインで閲覧可能なデジタルコンテンツを制作している.画像の取得,分析,表示・閲覧に至るまで,デジタル化のあらゆる側面をカバーした研究を続けている.本稿では,京都大学工学研究科の先端イメージング工学研究室,そしてその活動を引き継いだ先端イメージング工学研究所および株式会社アートリサーチがどのような理念を持って活動を進めてきたかを示すとともに,様々な文化財をデジタルアーカイブ化した実際のプロジェクトの事例を紹介する.

  • 宮前 知佐子
    2023 年 62 巻 1 号 p. 47-58
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    本稿は,三次元計測技術を利用したデジタルドキュメンテーションと,3Dデジタルデータの利活用手法に着目し,文化資源のデジタルアーカイブについて概観する.博物館など文化施設は,コレクションや研究資料の保存のため,デジタルアーカイブを構築してきた.デジタルアーカイブの中には,三次元計測により取得されたデータや,その他の3Dデータも含まれるが,フォーマットやハードウェア・ソフトウェアの制限により,データの利活用は進まずにいた.技術の変遷とともに活用の幅が広がってきており,コレクションの解説や研究成果の公開のため,VR (virtual reality) 作品など,3Dデジタルアーカイブデータを用いたコンテンツが開発されてきた.三次元計測技術が文化資源の分野に導入され,適用されてきた変遷をたどり,3Dデジタルアーカイブデータの特性や,データ利活用の発展について解説する.

  • 小檜山 賢二, 西田 拓央, 井尻 敬
    2023 年 62 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    本稿では微小な昆虫標本の2次元および3次元アーカイブを目的とした画像処理技術の動向と写真計測により標本を3次元モデル化した実例について解説する.まずデジタル写真処理技術を俯瞰し,続いて昆虫標本のデジタルアーカイブにおいて特に重要となる「深度合成」と「フォトグラメトリ」に関して,その歴史・技術内容・現状・展望を述べる.最後に,ホウセキゾウムシ標本を写真撮影により3次元モデル化した実例について紹介する.ここでは,微小物体を正確にモデリングするため,深度合成とフォトグラメトリを統合した手法 (マイクロフォトグラメトリ) を利用した.本稿で紹介した各技術による作品をインターネット上に公開したので参照してほしい.

  • 野口 淳
    2023 年 62 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 2023/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    立体物としての文化財のアーカイブスには3D計測が有効である.実在するモノ,建造物,空間などをLiDAR (light detection and ranging) スキャナや3D写真計測により対象表面を高密度な点群として,かたち,色・テクスチャを詳密に記録することで,光学的な「見た目」だけでなく,かたちとして残される製作技法や使用の痕跡も検討可能なアーカイブデータを作成することができる.微細なものから巨大なものまで,規模や複雑さに関わらずデジタルデータとすることで物理空間の制約を超えた保管と利活用が可能になり,また個別資料のデータを,より大きな組み合わせ,配置,構造の要素としてデータベース化することもできる.文化財3D計測の概念・手法・利活用と展望について概観する.

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