2024 年 63 巻 2 号 p. 168-175
身の回りに存在する振動エネルギーから,比較的小さな電気エネルギーを獲得する“振動エネルギーハーベスティング”への関心が高まっている.この技術の最大の特徴は,環境エネルギーが存在している限り永久的に電力を供給することができる点にあり,電池交換や電気配線を必要としないデバイスへの応用が期待されている.このような技術は今後,IoT (internet of things) やCPS (cyber physical system) に象徴される多量の分散型センサーシステムへの電源用途として活用されることが想定される.圧電性高分子は柔らかさを特徴とする機能性材料であるが,その加工性や大面積性にも注目した振動発電応用が期待される.本稿では,圧電性高分子の特徴と振動発電における定量的扱いについて紹介するとともに,バッテリーレスで動作する新たな応用展開の可能性について概説したい.