抄録
気功中に前頭部の脳波徐波化傾向及び光トポグラフィによる脳血中各ヘモグロビン成分の変化に関して、前回に報告した。本研究では、同一被験者の心電R-R間隔の変動およびそれと徐波成分の振幅との相関について分析を行った。心電R-R間隔の分析では、気功時において、LF/HFが有意に増大した(p<0.001)ことに対し、HF/TP(totalspectral power)が有意に低下した(p<0.005)ことがみとめられた。一方、脳波の分析では、α帯域に関して、対照時に比較し、前頭部位(Fp_1)、左後頭部(O_1)、さらに両側側頭部(T_5,T_6)において、気功中の平均振幅が有意に増大し(p<0.001)、しかも実験中α波平均振幅の変動は心電R-R間隔のLF/HFとの間に強い正の相関があることがみられた。θ帯域についても、右頭頂(C_4)、側頭部域(T_6)において、類似した結果がみられた。気功時に呼吸頻度が低下する(O.1Hz前後)ことから、気功中呼吸の制御による自律神経系に対する働きかけによって、主観的意識状態の変化をもたらす可能性が示唆された。