抄録
近年,畜産廃棄物の処理が重要な環境課題となっている。本研究では,畜糞等の畜産廃棄物の処理水によって微細藻類を培養し,得られた藻類バイオマスを有機農業作物に施肥する資源循環型畜産廃棄物有効利用システムの開発を目的として,単細胞緑藻Parachlorella kesseleri NIES 2160(P. kessleri)の鶏糞処理水による培養と山梨県内の農場施設に設置した微細藻類大量培養プラントの試験運用を行った。その結果,P. kessleriは鶏糞処理水中にて無機培地よりむしろ高い生長速度を示すことがわかった。夏期高温期の培養プラントへの河川水による培養液冷却システムの導入により,液温調節が培養の高効率化に有用である事が示された。処理水を培養液として得られた藻類バイオマスを用いた蔬菜類への施肥試験では特に葉菜類の生長を促進する効果が示唆された。このような資源循環型システムの導入によって,人類による環境負荷を低減することができると考えられる。