2009 年 2 巻 p. 3-17
本論文は、エスニシティという概念を、特定の人々が共有する特性や帰属としてではなく、より広範な社会編成の原理として再定義することを提案するものである。アメリカ合衆国におけるエスニシティ論は、エスニック集団を基本的な構成単位と考えるエスニック多元主義という規範を内在させて展開してきた。たとえば、「日系アメリカ人のエスニシティ」は、独特な文化を有する「日本人」としての第一世代が、その世代交代を通して、エスニックな意識を強化しつつ、アメリカ市民社会の一員として適応する過程を説明する概念とされてきた。このように考えると、エスニシティは、特定の集団の特性を示すというよりも、その集団を続合しようとするアメリカ社会の編成原理として作用したといえる。そこで、本論文では、エスニシティを、ある種の出自を共有していることをめぐる言説が、社会経済的な資源の配置を導くという一連の社会編成の過程を指すものとして提案する。その具体的な課題は、集団に内在する特性の解明よりも、ある集団を社会のなかで固有性を持った存在として認識させる社会的力学を明らかにすることにある。そして、エスニシティ概念をエスニック多元主義の規範から切り離し、その社会学的概念としての可能性を追求する。