抄録
ニュース等の番組で音声の内容を省略することなく字幕表示したときに, 字幕の量や速度が聴覚障害者にとって受容可能であるかを検討する必要がある.本稿では, 実際に放送されているニュース番組に字幕を全文表示し, 聴覚障害者がどの程度受容しているかについて調べた結果を述べる.今回, 受容の程度を調べる手法として, 表示した字幕番組の内容に関する再認実験を行った.実験の結果, 内容の了解度は発声内容全文を字幕で付与することにより字幕なしの場合に比べて有意に向上し, 健聴者が映像と音声から得られる了解度とほぼ同程度まで改善された.したがって, 今回の条件下(300字/分程度, 1番組約2分間)で全文表示された字幕は聴覚障害者にとって受容が可能であり, 内容の理解に有効であることがわかった.