抄録
我々が立体物を観察する際,一般に対象物をどの角度から観察しても物体の同定が可能である.このような形の恒常性が実現されている背景として,オブジェクト認識過程において視点に選択的な処理が存在することが心理物理および電気生理実験により明らかにされつつある.視点依存処理の存在を示す興味深い現象に,視点順応効果(viewpoint aftereffect)がある(F.Fang & S.He,Neuron,45,793-800,2005).これは,一定方向を向く顔画像を観察した後に正面向きの顔画像を見ると,最初に観察した方向と反対方向に向いた顔画像が見えるという現象であり,顔の向きが表現されている処理過程での順応効果であると考えられる.本研究では,視点順応効果の根拠となる処理のレベルを検討することを目的とし,異なる奥行手がかりの間の残効転移および色や刺激眼の影響について調べた.その結果,視点順応効果が確かに物体認識過程の現象であることを支持する結果を得た.