2021 年 13 巻 1 号 p. 53-55
本研究は,文字をかく書家の描画姿勢を,全身協調という観点から検証した.プロの書家1 名が,漢字を臨書する過程の筆尖・頭部・体幹軌道の相互結合の度合いを,相互相関関数を用いて評価した.その結果,書家の身体が,筆尖と体幹の運動を強く結合させていること,また,この結合度合いが,字画の特定の描画局面に応じて変化することが示された.筆尖と体幹の2 変数は,とりわけ「点」の収筆動作や「払い」動作において,強く結合していた.この結果は,書家の身体が,字画を描画する場面に応じて協調パターンを変化させる,全身を使った描画姿勢を獲得していたことを示している.