岩手医科大学歯学雑誌
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原著
頸部リンパ節転移巣に対する温熱療法と放射線療法との併用効果について
小豆島 正典六本木 崇鈴木 美智恵佐々木 統後藤 浩美大友 千里坂巻 公男柳澤 融
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1989 年 14 巻 2 号 p. 92-99

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抄録

32例の頸部リンパ節転移に対し, 局所温熱放射線併用療法を施行した。加温には2.45GHzのMicrowaveを用いた。放射線療法は通常行なわれている1日2Gy, 週5回の分割照射とし, 総線量は20~80Gyであった。温熱療法は放射線照射終了後60分以内に開始し, 加温は42.5℃で60分間とした。治療効果を腫瘍縮小率で判定したところ, 32例のうち4例(12.5%)はcomplete regression, 16例(50.0%)はpartial regression(PR), そして12例(37.5%)はno regressionという成績が得られた。治療効果の腫瘍組織型に対する依存性は明らかではなかった。リンパ節転移巣に対し, 温熱放射線併用療法は, 一時的制御効果はあったが, 累積生存率で放射線単独療法と比較すると, 2年後の生存率はほぼ同じ(22%)であった。温熱放射線併用療法終了後にリンパ節摘出術が行なわれ, 病理組織学的所見が得られた症例は4例であった。これらはすべてPRであり, 4例中3例には病理組織学的に腫瘍細胞の消失が認められた。これは温熱放射線併用療法による転移性リンパ節の縮小率が100%未満であっても, 腫瘍細胞が消失している場合があることを示す。

放射線単独治療の際に一般的に認められる照射野内の組織反応以外に, 併用療法による副作用はなかった。

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1989 岩手医科大学歯学会
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