抄録
本研究の目的は,発生項目の予測誤差が利益の質に対して与える影響を実証的に検証することである。本研究では,利益の質を概念フレームワークに従って議論し,利益情報が持つ価値関連性の程度を利益の質に対する尺度と定めた。そして,発生主義会計のプロセスで生じる予測誤差を発生項目の質と捉え,利益情報が持つ価値関連性に与える影響を検証した。分析の結果,発生項目の質が高いほど,利益情報の価値関連性が高まることが確認された。本研究の意義は,利益情報の有用性の源泉として発生主義会計のプロセスに焦点を当て,発生項目に生じる予測誤差と利益の質の尺度としての目的適合性との関係性をわが国のデータを用いて検証したことにある。利益の質に関してわが国のデータを用いた実証的な研究は多くは行われていない。本研究の結果は,わが国における今後の利益の質に関する実証研究に示唆を与えることが期待される。