会計プログレス
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減損会計基準の適用時期の選択と経営者の会計行動に関する実証分析
榎本 正博
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2008 年 2008 巻 9 号 p. 23-38

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抄録

 本稿は,減損会計基準を対象に,新会計基準が導入される際に適用時期を選択可能にした政策的配慮がどのような会計行動をもたらしたか探るものである。分析ではまず,サンプルを減損会計基準の適用時期で早期適用企業と強制適用企業に分類する。そして減損損失の計上要因を,利益マネジメント要因と経済的要因に分け,これら要因が,早期適用企業と強制適用企業でどのように変化するか調査した。分析の結果,強制適用企業では早期適用企業から引き続きビッグ・バスとみられる会計行動が観察された。しかし利益平準化については,早期適用企業は先行研究と同様に観察されたものの,強制適用企業ではみられなかった。よって,強制適用期には利益マネジメントの傾向は弱くなっていることが示唆される。これらは適用時期に幅を持たせた政策的配慮が,早期適用企業に,より利益マネジメントの手段として用いられたことを窺わせるものである。一方で,強制適用時に,減損損失の計上に対して経済的要因の影響が強くなる証拠は得られなかった。

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© 2008 日本会計研究学会
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