本研究では,積極的・保守的な業績予想を行う経営者の動機やインセンティブの一端を明らかにするとともに,どのような時に経営者は予想方針の見直しを行うのかについて検証を行った。分析結果をまとめると,経営者が報酬面で高株価の恩恵を受ける企業,財務困窮企業,株式市場のプレッシャーが強い企業,予想期に株主から資金調達を行う企業は積極的な予想を,債権者のプレッシャーが強い企業は保守的な予想を公表する傾向にあることが観察された。また経営者交代時に前任者が経常利益を計上している企業は予想の積極性の程度を弱めるのに対し,経常損失を計上している企業は積極的な予想を公表することが判明した。さらに前期に正の大きな予想誤差を計上した企業は予想の積極性の程度を弱めるのに対し,負の大きな予想誤差を計上した企業は積極的な予想を公表するという結果も観察された。