2016 年 2016 巻 17 号 p. 1-12
本稿では,独占的川上企業が数量競争をおこなう複数の川下企業に中間製品を販売する市場環境を想定し,川上企業が提示する供給価格が共有される状況と供給価格について不確実性を有する情報が開示される状況が,企業利得に与える影響を分析する。結果として,供給価格が共有される場合,川下企業は供給価格に対する競争相手の行動を反映し,数量を決定するが,供給価格に関する情報が開示される場合,川下企業は供給価格に対する競争相手の反応が正確に予想できないため,最適と予想される数量を決定してから,開示情報を反映する形で数量を調整する。特に供給価格に関する不確実性が十分に高く,価格が激しく変動する市場環境においては,情報共有の状況よりも,情報開示の状況における各企業の期待利得が高くなる状況が存在する。