抄録
本論文は,議決権行使状況の分析を通じて,個人株主の増加が企業経営に対する規律付けを相対的に低下させるか否かについて実証的に明らかにすることを目的とする。具体的には, 2010年から2015年までに提出された臨時報告書,延べ690件を対象として,取締役選任議案における議決権不行使率の変化と,同期間における個人持株比率の変化の関係を分析した。分析の結果,両者の間には統計的に有意なプラスの関係が確認された。本論文の証拠は,経営参加のインセンティブが低い小口の投資家である個人株主が増加することによって,企業経営に対する規律付けが相対的に低下することを示唆する。