会計プログレス
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不正会計に起因する修正再表示が会計的裁量行動にもたらす変化の実証分析
尾関 規正
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2021 年 2021 巻 22 号 p. 67-85

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抄録

 本稿の目的は、不正会計の発覚に起因して修正再表示を行った企業において,その発覚後に生じる会計的裁量行動の変化を明らかにすることである。企業の会計的裁量行動を反映する異常会計発生高について,日本における不正会計に起因して修正再表示を行った企業と不正を開示していない企業の差に生じる開示前後の変化(difference-in-differences)を分析した。その結果,不正会計を開示した企業では,開示期とその翌期及び翌々期で異常会計発生高がマイナス方向へ有意に変化することを発見した。一定の会計的な影響をもつ不正会計の開示が,企業にとって過去の会計的裁量行動の反転をもたらす転機となり,その後も会計的裁量行動が抑制されることを意味する。不正会計が発覚した企業では,信頼を回復するために財務報告の品質改善をシグナリングする行動をとることが示唆される。

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© 2021 日本会計研究学会
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