近年,日本を代表する非営利組織である公益法人のガバナンスが注目を集めている。本稿では,公益法人ガバナンスとパフォーマンスの関連性を明らかにすることを目的とする。本稿は米国非営利組織における最高意思決定機関である理事会を対象にして実証分析を行ったAggarwal et al.(2012) の理論と証拠を参考として,日本の公益法人を対象とした実証分析を行う。ただし,日本の公益法人制度では,米国非営利組織における理事会のような最高意思決定機関は社員総会/評議員会となっており,公益法人のパフォーマンスに対して社員総会/評議員会との関連性を検証することが妥当である。2013年から2017年における25,370公益法人×年度データを用い検証を行った結果,公益法人の社員総会/評議員会のサイズは公益法人のパフォーマンスと関連を有していた。一方,社員総会/評議員会のサイズを所与とした場合,理事会のサイズは公益法人のパフォーマンスとの関連がみられなかった。本稿は,寄附者などの主要なモニタリング主体が欠如している環境において,社員総会/評議員会が有効なモニタリングメカニズムとなる証拠を提示することで,非営利組織の経営者,規制者に対して知見をもたらしている。
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