抄録
本稿では,株主優待の実施を日本企業の特徴的な行動の一つと捉え,企業の行動特性として広く存在が確認されている「横並び行動」の発現という観点から分析を行った。その結果,前年度に同業種の他の企業が株主優待を行っているほど,企業は株主優待を新たに実施する傾向があることが示された。ただし,前年度の同業種トップ企業の株主優待導入の有無に関しては有意な結果は得られなかった。当該結果は,企業が株主優待を実施するにあたって,同業種トップ企業の追随ではなく同業種の他の企業の動向を確認した上で意思決定を行うという「横並び行動」をとる傾向にある可能性があることを示唆している。