日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
大動脈解離に多発性単純性肝・腎囊胞が併発した1症例
森 久弥 髙木 寿人
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 33 巻 4 号 p. 185-190

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抄録

われわれは,多発性単純性肝囊胞と多発性単純性腎囊胞両方に偽腔開存型Stanford A型急性大動脈解離(上行大動脈にtearを認めず,SVS/STS分類でB(0, 11))を合併したまれな症例を経験した.解離発症時に脳梗塞も併発していて体外循環は禁忌と考え,遠位弓部大動脈の一次エントリーを閉鎖するために,胸部ステントグラフト内挿入術を行った.当科で2022年1月から2023年12月までの2年間に,Stanford A型急性大動脈解離に対して手術を行った45例の中で常染色体優性多発性囊胞腎合併例はなく,単純性腎囊胞合併は14例(31.1%)・単純性肝囊胞合併は11例(24.4%)・少なくともどちらかの合併は20例(44.4%)・両方の合併は5例(11.1%)・多発性単純性肝囊胞と多発性単純性腎囊胞両方の合併は1例(2.2%)であった.単純性肝囊胞・単純性腎囊胞・大動脈解離の共通した病因としてマトリックスメタロプロテアーゼの関与が示唆されているが,今後のさらなる研究が待たれる.

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